アメリカで「若者の雇用だけ」が減っている…世界を襲う「AI就職氷河期」の始まり [JP-hyVMws]
写真拡大 (全3枚) AIによる「就職氷河期」が始まった19世紀、世界の産業の中心地・ロンドンでは、交通の主役は馬だった。街を走る鉄道は馬が牽き、開発されたばかりの自動車は「馬のない馬車」と揶揄されていた。しかし、1908年に米フォード社が初の大量生産自動車「モデルT」を発売すると、自動車が瞬く間に...
写真拡大 (全3枚) AIによる「就職氷河期」が始まった19世紀、世界の産業の中心地・ロンドンでは、交通の主役は馬だった。街を走る鉄道は馬が牽き、開発されたばかりの自動車は「馬のない馬車」と揶揄されていた。
しかし、1908年に米フォード社が初の大量生産自動車「モデルT」を発売すると、自動車が瞬く間に普及し、1915年には最後の馬車鉄道が走り終える。
10年も経たぬうちに、数千年間も人類社会を支えてきた馬車は、ほぼ全て機械に置き換えられた。いま、AIという「新しい自動車」の前で、人間が「馬」の立場に立たされようとしている。アメリカのテック企業を中心に、AIによる「就職氷河期」が始まったのだ。米「ザ・ビジネス・ジャーナルズ」紙のアンディ・メディチ記者が解説する。
「ソフトウェア技術者などのエンジニア職の採用が厳しくなり、若手の大規模なリストラも起き始めています。ほんの少し前までは、プログラミングを学べば、高収入の仕事は簡単に見つかると言われていました。そのため、コンピューターサイエンス系の学部が人気となり、若者たちの多くがエンジニア職を目指していました。
ところが、若手に任されるような初級レベルのプログラミングをAIでもこなせるようになり、風向きが変わってきました。AIの設備投資に莫大なおカネをかけているテック系の企業が、コスト削減の必要に駆られ、20代の若手エンジニアを中心に雇用を止めはじめたのです。企業によっては、経験のある少人数の中〜上級エンジニアがAIを駆使して、100人単位の若手が行っていた仕事をこなしているそうです」どんな仕事も安泰とは言えないスタンフォード大学の研究によると、OpenAIが対話型AI 「ChatGPT」を'22年11月にリリースして以降、エンジニア業界で若者の雇用者数が激減し(次ページ図)、一方でAIに指示する中堅の雇用は増加するという現象が起きている。
「AI失業」は、ソフトウェア技術者に限った話ではない。すでに、スウェーデンの後払い決済システム大手クラーナ社は、AIの導入で従業員数を7400人から3000人へと半減させた。
さらに、営業支援ソフト大手の米セールスフォースは、4000人のカスタマー 部門をAIに置き換えると発表している。
「生成AI」と聞くと、文章作成や、画像生成、動画制作のイメージが強いが、最も強みを発揮するのがプログラミングだ。すでにマイクロソフト社製品のプログラムは3割以上がAIで書かれており、5年以内に95%までその割合が上がると、同社CTOは予測している。AIに職を奪われるのはスキルのない若手ばかり―という状況も、いつまで続くかわからない。
このままAIのレベルが上がれば、若手だけでなく、シニアレベルのエンジニアも職を奪われることになりそうだ。
「多くの人は、AIは人間の仕事の補助輪の役割をするのみで、ビジネス戦略などのクリエイティブな仕事は代替できないと考えています。
しかしその予測も、AIが目まぐるしく発展する速度を見ると、楽観的な意見に思えます。アメリカのAIスタートアップ・アンソロピックのCEO、ダリオ・アモデイが『最終的には全ての業務が完全に置き換えられる』と発言しているように、どんな仕事も安泰とは言えないのではないでしょうか」(メディチ氏)後編記事『日本に「AIに仕事を奪われる日」は来るのか…頭脳労働だけでなく肉体労働まで代替する未来』へ続く。
「週刊現代」2025年11月10日号より【後編を読む】日本に「AIに仕事を奪われる日」は来るのか…頭脳労働だけでなく肉体労働まで代替する未来 リンクをコピーする みんなの感想は?外部サイト 【後編を読む】日本に「AIに仕事を奪われる日」は来るのか…頭脳労働だけでなく肉体労働まで代替する未来 【こちらも読む】AIにも「身体的な経験」が必要…生成AIの不具合がもたらした「言語学の新たな発見」 いまアメリカで「不寛容な若者」が増えている…A24映画監督が感じた「衝撃の変化」 関連情報(BiZ PAGE+) バケーション, ブラジル, リオデジャネイロ, リゾート