OpenAIは今や「失敗するには大き過ぎる(too big to fail)」存在に…サム・アルトマンCEOの”妄想を現実に変える手腕”が世界の株式市場を支えている現実 [JP-MnmiPW]
写真拡大 (全8枚) クラウド事業の売上が好調なグーグルやアマゾン先週は米国のグーグル(アルファベット)やアマゾンなどビッグテックの決算発表が相次ぎ、いずれも好調な業績とそれに支えられた強気な投資姿勢が鮮明となった。グーグルは2025年の第3四半期に売上高が1023億ドル(16兆円以上)に達し、前年...
写真拡大 (全8枚) クラウド事業の売上が好調なグーグルやアマゾン先週は米国のグーグル(アルファベット)やアマゾンなどビッグテックの決算発表が相次ぎ、いずれも好調な業績とそれに支えられた強気な投資姿勢が鮮明となった。グーグルは2025年の第3四半期に売上高が1023億ドル(16兆円以上)に達し、前年同期比で約16パーセント増。
中でもクラウド事業の売上は前年同期比で約34パーセント増の152億ドル(2兆円以上)に達した。このため同社は今後のデータセンター建設など設備投資(CapEx)見通しを上方修正し、今年通年で910億〜930億ドル(14兆円以上)を見込んでいる。
一方、アマゾンは同四半期の売上が約1802億ドル(約28兆円)と前年同期比で約13パーセント増加した。やはりクラウド事業の売上が好調で、前年同期比20パーセント増の約330億ドル(約5兆円)に達した。
データセンターを中心とするアマゾンの設備投資額は今年通年で1250億ドル(19兆円以上)に達する見通しだが、来年はさらなる増額を見込んでいるという。これら2社にマイクロソフトとメタ(旧フェイスブック)を加えた、米ITビッグ4によるデータセンター建設などAI投資総額は今年通年で約4000億ドル(60兆円以上)に達する見込みだ。
Magnificent 7の時価総額がS&P500全体の3分の1を占めるこれらビッグテックの好業績に背中を押されて、アメリカや日本の株式相場は最近までほぼ連日のように史上最高値を更新してきた。具体的な数字は今更言うまでもないが、それら相場のけん引役とも言えるAI半導体大手、Nvidiaの時価総額は先日ついに5兆ドル(750兆円以上)を突破した。
これにより同社は、米株式市場の代表的指数であるS&P500全体の時価総額の約8パーセントを占めるに至った。このNvidiaを筆頭にグーグル、アマゾン、メタ、マイクロソフト、アップル、そしてテスラを加えた、いわゆる「Magnificent 7」の時価総額はS&P500全体の約33パーセントまで達した。
これらビッグテックの大半がAIビジネスに関与していることから、今や日米(いや、恐らく世界全体)の株式相場を支えているのはAI関連銘柄と考えるのが定説と化している。AIブームに対するパウエル議長の微妙な評価一方で、このように加熱するAIブーム、つまりAIバブルに対する警鐘は各所で鳴らされている。
先週水曜日(10月29日)には連邦準備制度理事会(FED)のジェローム・パウエル議長が(主にAI向けの)データセンター建設など過剰な設備投資に対する懸念を表明した。
同氏は現在のAI設備投資は「持続不能(unsustainable)な水準に達している」との見解を示した。ただ、この指摘は現在のAIブームを一概に「バブル」と決めつけるものではなく、むしろ微妙なニュアンスを含んだ複雑な評価だった。
パウエル氏は、現在のAIブームを1990年代後半のインターネット・ブーム(ドットコム・バブル)と同一視する見方を否定した。
同氏は「あの当時(1990年代後半)の株式市場をけん引していたのは本物の企業ではなく、単なるアイディアに過ぎなかったという点で明らかにバブル化していた。これに対し現在のAIブームでは、(アマゾンやグーグル、メタ、マイクロソフトなど)大手企業が巨額の設備投資を自力で賄うだけの十分な収益を稼ぎだしており、確固たるビジネス・モデルに支えられている」と評価した。
ただ、これら巨大IT企業とは対照的に、多くのAIスタートアップ企業はセーフティネットが用意されていない状態で途方もない投資をしており、これに対する懸念はFEDのような金融当局のみならず市場関係者の多くが共有するところとなっている。シリコンバレー史上最も重要な企業を目指すOpenAIそうしたAIスタートアップの代表と言えるのが、生成AIブームの火付け役であるOpenAIであることは言を俟(ま)たない。
同社は先週、米デラウェア州とカリフォルニア州の司法長官から了承を取り付けて、念願の「PBC(Public Benefit Corporation:公益株式会社)」への転換を果たした。これにより、これまで同社株主への投資リターンに課せられていた上限などが取り払われ、より普通の営利企業に近くなった。
その代償として同社は今後、母体となる非営利団体「OpenAI Foundation(財団)」に(推定)1300億ドル(約20兆円)分の株式を譲渡することが義務付けられる。が、それでもこの組織転換によってOpenAIは従来以上に資金調達の自由度が増すと共に、いずれはIPO(株式初公開、上場)を果たすことも視野に入ってきた。
実際、OpenAIは2026〜2027年を目途にIPOを計画しているとされ、その際の想定時価総額は最大で1兆ドル(150兆円以上)に達する見通しと一部メディアで報じられている。仮にそうなれば、その額は2019年にIPOを果たした(サウジアラビアの石油会社)Saudi Aramcoの(上場時の)時価総額である(推定)1.7兆〜2兆ドルに次ぐ史上第2位となる。
ここに見られるように、OpenAIの勢いは今や止まるところを知らない。ロイター通信によれば、同社のサム・アルトマンCEOはかつて従業員の前で「我社はシリコンバレーの歴史上、最も重要な企業になる」と宣言したというが、当時は法螺にも聞こえた事が今や現実味を帯びてきた。
この目標に向けてアルトマン氏は先月28日、インターネットのライブ配信で「(OpenAIは)今後、約1兆4000億ドル(210兆円以上)を投じて最大30ギガワットの(データセンターなど)コンピューティング資源を建設する」との決意を明らかにした。
一方、ウォールストリート・ジャーナルによればOpenAIの投資規模はさらに膨らみ、2033年までに総計250ギガワットのコンピューティング資源を建設する目標を立てている。それに要する費用(投資総額)は10兆ドル(1500兆円以上)に達する見通しという。
この額は日本とドイツのGDPを合算した値(9.1兆ドル)をゆうに上回る。
自らの妄想を他者に受け入れさせる手腕アルトマン氏は2019年、自身のブログで「成功するための秘訣」について「私の知る限り最も成功している人たちは、自身を信じる気持ちがほとんど妄想に近いほど強い」と述べる一方、「自己信念だけでは不十分で、自分の信じることを他者にも納得させることが必要だ」と断っている。この発言(の特に後半)は言われてみれば当然かもしれないが、同氏の場合、それを実行に移してしまうことが特に際立っている。
このブログにおける発言と同時期の2019年、アルトマン氏はマイクロソフトのサティア・ナデラCEOを説得し、(同社からOpenAIに)約10億ドル(当時の為替レートで1000億円以上)の出資を引き出したが、当時OpenAIに対するIT業界関係者の評価は未だ定まっていなかった。が、それでもこれほど巨額の投資をマイクロソフト(のナデラCEO)から引き出した最大の理由は、自らの妄想的なビジョンや信念を相手にも信じ込ませるアルトマン氏の特異な手腕であることは間違いなさそうだ(具体的にどんな手腕なのかは分からないが)。
やがて2022年末のリリースから爆発的なヒットを記録したChatGPTを境に、アルトマン氏の求めるAI関連の出資額はけた違いにアップしていく。代表的なところでは、今年1月にホワイトハウスで発表されたスターゲイト計画における1000億〜5000億ドル(75兆円以上)のAIインフラ設備投資、あるいは今年9月にNvidiaが発表したOpenAIへの(GPU調達用の)最大1000億ドル(15兆円以上)の投資計画などがある。
他にも(半導体大手の)AMDやBroadcom、あるいは(ソフトウエア大手の)オラクルなど、AI開発の未来を見据えるアルトマン氏の壮大なビジョンに共鳴する企業は後を絶たない。OpenAIは今やToo Big to FailこのようにしてOpenAIと巨額ディールを結んだ数々の企業の株価は次々と高騰し、それが現在の株式相場をけん引していることを考えれば、OpenAIは今や市場にとって「失敗するには大き過ぎる(too big to fail)」企業になってしまった感がある。
このOpenAI、つまりアルトマンCEOのビジョンに賭けた会社はNvidiaやオラクル、ソフトバンクのような大手企業だけではない。たとえば(OpenAIやマイクロソフトなどと取引する)クラウドインフラ事業者のCoreweaveなど、中規模のスタートアップ企業も多数含まれている。
これらのスタートアップは巨大データセンターなどの設備投資や巨額のソフトウェア開発費、さらに